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 レンガ塀に囲まれた四角い空間――過激な調教が、一歩まちがえば屠殺場になりかねないいつものプレイ場所で、わたしは御主人様の残酷な慰さみ者になるべく駆り立てられました。
 ただ、その日御主人様の横には、外国からのお客様として金髪の美しい女性がおりました。
「この子があなたの性奴?」
「麗花と申します」
「ずいぶん華奢だこと。胸もちいさいし……」
「ご不満ですか?」
「不満どころか、イメージどおりだわ。フィルムで見た女と体型も顔立ちもそっくり」
「フィルムとは?」
「40年も前の〈アノ戦争〉でのことよ。わが米軍特殊部隊が捕らえた“赤”の手先のテロリスト。仲間の秘密基地を吐かせるべく拷問にかけた際の記録フィルムがじつはわたしの手元にあり、それに写ってる女ゲリラとそっくりなのよ」
 自慢げにおっしゃるグラマラスな白人女性は、わたしの身体を頭から爪先まで、それこそイヤらしい目でしげしげと眺めわたしました。
「マダム・エリザベータ――」
「リーザと呼んで」
「ではリーザ様、この淫乱マゾ奴隷を、ご存分にいたぶってやってくださいませ」
「軍隊方式は半端じゃないのよ」
 そういってキラリと光らせた蒼い瞳。その瞳の奥に宿る冷酷な意志を感じとり、わたしは苦しいほど胸の高鳴りをおぼえたのでした。
 四角いエリアのなかに立つ棒杭に、手錠で後ろ手に拘束されました。胸は針金でぐるぐる巻きにされ、その際には乳首のうえをしっかり通されました。
 そしてそのあと、巻いた針金の一端には工業用の太いワニ口クリップが――
(電気を流されるんだわ!)
 わたしは戦慄しました。
 すでに御主人様から電気責め調教もいただいてはおりましたが、リーザ様がいわれた「半端じゃない軍隊方式」ということばが、頭のなかでなんども早鐘となって鳴り響きました。



 香水に混じって、白人特有のきつい体臭がすぐそばまで近づきました。リーザ夫人の手には、もう一方のワニ口クリップが握られていました。
「泣かせてあげるわよ」
 やにわに電極の先が性器に押し当てられ、乳房から二の腕、背中にかけてはビリビリという感じが走りまわりましたが、乳首と、なにより強く押し当てられたクリトリスや尿道孔あたりは鋭い刺激につらぬかれました。
 押し当てられた瞬間には卒倒し、「おおっ!」と思わず叫んでいました。
 わたしの苦悶を愉しみ愉しみ、夫人は電流の流れるワニ口をこすりつけたり突ついたり、さらにはズブッと入れてみたり、そのバリエーションが電流刺激のバリエーションともなって恥ずかしい部分の性感をビリビリ刺激しました。
「ああっ、ひいっ!」
 ちくちく刺される刺激に声を荒げていましたが、しばらくして電気にマヒしたのでしょうか。苦痛刺激は快感電流の潮流となって満ちては引き、高まっては身体全体に広がって、広がることで痛みも刺激も薄らぐようでした。
「あ、うう……」と、いつの間にかわたしの悲鳴は喘ぎに変わっていたようです。
「あら、もう電気が好きになったの?」
 満足そうな不満そうな、どちらともいえない口ぶりでした。
 夫人の感想をぼんやり耳にしながら、その部分はいやらしい水音をたて、とうとうわたしは情けないよがり声すらあげていたのです。
「こいつめ、お客様のまえで早くもこんなにマン汁を溢れさせおって、行儀の悪い奴っ!」
 御主人様には一喝して恫喝されましたが、
「いいのよ。そのほうが責め甲斐があるわ」
 夫人は愛液でぬるぬるになったワニ口を、もう片方の手でべろっと剥き上げたラビアの一端に噛ませました。
 足首にチェーンの付いた鉄枷がはめられ、チェーンが左右に引っぱられて両脚が無理矢理広げさせられました。そして……



「ギャアアアアーッ!」

 強烈な電流が乳首を、性器を直撃して身体中を貫きました。その凄さはさっきまでの電流刺激とはくらべものになりません。わたしは卒倒し、頭を思いきり棒杭に打ちつけて昏倒するところでした。
 かろうじて失神をまぬがれたのは、失神を許さぬくらい烈しい痛みと熱に灼かれていたからです。その熱さは乳房に食いこんだ針金からも伝わり、まるで電熱線のブラジャーでもまとっているかと錯覚するほどでした。
「わあああーっ!」と叫ぶ上体は右に左にのたうちまわり、その間にも身体を走りまわる電撃は異様な熱さをともなってバチバチと叩きつけ、貫き通し、焼き尽くされるようでした。
 ひきつれは、手にも足にも生じていました。筋肉の収縮が身体の内部から感じられました。筋という筋が電流でひきつれ、電流の一部は行き場をうしなって関節をきしませ、これがまた猛烈な痛みとなって襲いかかりました。
「ぎゃっ、きゃっ、ぎゃああーっ!」
 苦しまぎれに泣き叫んでも電流からは逃れようもありません。痛みと衝撃で全身総毛立つ思いでした。身体中の毛穴という毛穴が電気ショックにびりびり反応しているのでした。
「ほら見て。この子ダンスを踊ってるわよ」
 リーザ夫人がそう言ったと、あとで御主人様から聞いたことでした。とにかくそのときには半狂乱でなにも見えず、なにも聞こえませんでしたから――。
 その場の情況を、御主人様からうかがった話から客観的に再現するとこうです。
 杭にくくられた人の字全裸の全身が、烈しく痙攣し、身をくねらせ、右に左にのけぞり、腿から先に硬直の筋を浮き立たせ、ぴくぴく痙攣させて屈伸運動を繰り返していたとのこと。
 両脚が一定角度をたもって、それ以上曲がったりも伸びたりもせず、また倒れもせず立って持ちこたえられたのは、皮肉にも電流による筋肉の突っ張り現象がはたらいてのことだというのです。
 それがまるでダンスをしているようだと、御主人様もリーザ様も一時手をたたいてはやし合っていたそうです。
 夫人はこんな話もされたそうです。
「フィルムの女は後ろ手に縛られただけで地べたに寝かされてたけど、通電の瞬間狂ったように泣き叫び、なんとか電極がヴァギナからはずれるようにと、脚をおおきく広げたり逆に閉じたり、それが妙にエロチックでね……」
 それを思い出し、記録を忠実に再現すべく、無惨きわまりない電気拷問調教を嬉々として実行したのです。
「ギャアアアアーッ!!」
 もの凄い電流電圧がこの身を焼けただれさせるようでした。すでにわたしは身体中から脂汗を吹き出し、全身ベットリとローションオイルを塗りたくったようでした。
 電撃が熱をともなっていた証拠には、針金を巻かれた乳房の、針金を食いこませた皮膚周辺が真っ赤に色づき、低温ヤケドを受けたようになっていたからです。
「ぎゃあああーっ、もうやめてっ! 死ぬわっ! わたし死にたくないっ! もうこんなことたくさんだわっ!」

 御主人様のどんな惨い調教にも耐えてきたわたしでしたが、リーザ夫人の拷問だけには耐えきれず、キチガイのように首を振って許し乞いを繰り返したのでした。
「まだよ。まだまだ! フィルムにでてくるベトコン娘は最後まで音を上げなかったわよ。そうして拷問のあと、どうなったと思う? 業を煮やした兵隊は娘の手足を戸板に釘で打ちつけ、生きながら腹を裂いて処刑したのよ」
 そう言い放ったあとで、リーザ夫人の癇性な笑い声が悪魔の嘲笑のように耳にとどきました。
 その間にも人の字に拘束された全身は、リンボーダンスのかっこうに似た奇妙なゆがみを保ちつつ、痙攣とひきつれを繰り返し悲鳴と絶叫をあげつづけたのでした。


 どれくらい経ったでしょう。
 やっと電流が中断されて、棒杭からは解放されたものの胸の針金はそのままに、犬のように膝を突いて尻を高く突き出させられました。
 衣ずれの音がして、目の前に現われたリーザ夫人は、豊満な胸を揺らした全裸の腰にペニスバンドを付けていました。
「こんどはこれよ」と言ってワニ口からコードをはずすと、裸に剥かれた電線部分を張り型の尖端に巻きつけました。
「さあ、あなたもその立派な一物をわたしのアヌスで満足させていいわよ。2箇所密着しなければ電気は流れないから、突くだけなら平気よ」
「ではおことばに甘えて」
 間もなく、猛烈な痛みとしびれが無傷なほうのアヌスを直撃しました。秘穴をこじ開け、電撃で灼きながらどんどん挿入されたのです。
「ヒィーッ!」
 激痛に身体を揺すって泣き叫びました。
 2匹のメスと1匹のオスによる呑みつ呑まれつの残酷で淫靡で異常な交尾――わたしにとってのペインダンスは、まだまだ終わりを見ることはなかったのでした。




     
――本篇資料として、以下を参考にしました。
映像部門「実録 ヴェトナム戦争残虐史」(1975年製作、ゼネラルワーク)
参考書籍「ベトナム戦争〜民衆にとっての戦場」(吉澤南著、吉川弘文館刊)


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